私が「西の魔女が死んだ」を初めて読んだのは小5の時で、それまでにも児童書とか絵本は読んでいたけど、自分の中で明確に「読書体験」と呼べるものってこの本を読んだ時が最初だった気がする。
それから今日までに、色んな人の色んな小説を読んだけど、結局自分の根っこはこの物語だという実感がある。
もう何回読み返したかわからないほど読み返していて、本文はだいたい覚えている。
そんな本の愛蔵版が出ていたとは知らず。
短編や書き下ろしまで収録されていたとも知らず。
さっき読んだ。
短編全部良かったけど、「冬の午後」が特に良かった。カタルシスがあった。それも生半可じゃないやつ。数十年分の心の澱みとか傷が全部いっぺんに浄化されるような圧倒的なカタルシス。
人生の中でごくまれに出会う、自分のことをこれから先もずっと救い続けてくれるであろう予感に満ちた言葉に久しぶりに出会った。
その衝撃の強さに年甲斐もなく泣いた。
「かまどに小枝を」も良かった。この物語を心の拠り所にして今日まで生き延びてきたかつての子どもたちへの返歌みたいな短編だと思った。というより、この愛蔵版自体がそういう存在かもしれない。
今この時に読めて良かった。精神と思想を正位に引き戻す力がある本。
多分これから先もずっと助けてくれる。
ずっと大切にする。